文部科学省では、毎年、全国の学生等を対象にアントレプレナーシップを身に付けるための「全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム(全国プログラム)」を実施しています。今回は、このプログラムに参加した、札幌大谷大学(社会学部・地域社会学科)の山下健さん(2022年度受講)と、國學院大學(経済学部・経営学科)の羽賀優太さん(2023年度受講)に感想やその後の活動を伺いました。
山下
私は札幌大谷大学・社会学部・地域社会学科で、社会学を中心として、主に経営の分野を学んでいます。経営学的な観点から地域社会に対してどのように貢献できるか、マーケティングの視点も交えて研究しています。
全国プログラムは知人の紹介で知りました。最初はあまり気にしていませんでしたが、SNSやインターネットで頻繁に目にするようになり、気がつけば内容に興味を持っていました。私は北海道に住んでいることもあり、主に地元の学生としか交流がないため、全国の学生との交流が可能という点はプログラムの受講の決め手の一つでした。
羽賀
全国プログラムについて初めて知ったのは、SNS広告です。実施されていることは以前から知っていましたが、日程の都合上参加を見送っていました。
ですが今年もこの全国プログラムが開催されると知り、参加を決意しました。私は教育・福祉の分野を通じて地域活動を行っています。主に小さなお子様から高齢の方々が対象であるため、他の大学生と関わる機会は多くないのが現状です。そんな中、全国の学生たちと出会えるプログラムを知り、重要な機会であると考え受講することにしました。
山下
プログラムに参加することで「挑戦すること」の重要性を実感しました。もしかすると以前の私はやや他人任せだったのかもしれません。完璧主義なこともあり、失敗することへの恐れや、怒られることへの不安が大きかったのだと思います。自分自身の能力を客観的に評価する機会によってこれらの弱点に気づけたことは、大変貴重な経験でした。
現在「挑戦すること」は、自分の大事な理念となっています。また、臨機応変に対応する能力やビジネスアイデアの創出方法など、自己の成長に繋がる部分も大いに参考になりました。常識にとらわれず新しいアイデアを生み出し、それを深く掘り下げることは今後のキャリアにおいても役立つと感じています。これを機に積極的に挑戦し、失敗を重ねながらも成長していきたいと感じました。
羽賀
今回のプログラムでは「ビジネス起業」を大きなテーマとして扱っていましたが、私が行う地域での活動の進め方とも、本質的には大きく変わらないことを実感できたのは大きな収穫でした。さらに、私がこれまで行ってきた活動の経験に対し、学術的な理論や体系的な知識が結びついていく感覚も実感できました。
また、このようなプログラムは「アイデアを考えること」に重点が置かれることも多いように思いますが、「本当に世の中にニーズがあるのか」という点を深く考える時間になっていたことにも驚きました。既存のアイデアに対して「良いと思うから試してみよう」という主観的なアプローチだけではなく「実際に困っている人が存在し、サービスを望むニーズがあるかどうか?」ということを考える力は、今後の活動においても大切にしたいです。プログラムの機会を通じて、地域課題の解決に繋がるニーズやサービスのヒントを得られたことは、非常に価値のある経験でした。
山下
大学卒業後は、私が重視する理念(チームワーク・挑戦・何事にも楽しく取り組む)と合致していると感じた企業への就職が決まっています。しかし、往々にして企業は「こうあるべき」という固定観念が根強いことも理解しています。
今後はこの固定概念の打破に挑戦するためにも、プログラムで学んだ知識やプロセスを活かしていこうと考えています。また、限定的な選択肢だけでなく、働き方の多様性を追求し、幅広い選択肢を持ってキャリアを築くことも重要だと感じています。
羽賀
私は今後、社会起業家として活動することを志しています。地元にいた頃に高齢者や子供たちが自然に交流する環境に身を置いていたことが、きっかけの一つです。地元では、散歩中に高齢者が声をかけてくれるような温かい環境があり地域の方々の様々な悩みを聞く機会も多くありました。しかし、大学の教育実習で地元に戻った際、子供たちが自分たちの意見や、やりたいことを十分に表現できていないのではないか?という空気も感じました。
また、コロナウイルスの流行をきっかけに地元へ戻った際「地元の活気が失われつつある」と痛感したことも、今後のキャリアを考える上での転機になったのではないかと思います。日常的に地方や地域における「孤独感」は、これからの大きな課題だと思っています。今回このプログラムで得た経験や、つながりを活かし、これらの課題解決に取り組みたいと考えています。多世代交流を促進するコーディネーターとして活動し、地域活動を通じたモデルケースの形成を行い、地域内外の架け橋となるような役割を果たしたいです。
山下
私自身、当初起業に対しては「硬い」というイメージを抱いていました。また、アントレプレナーシップについても、それは「起業を志す人々だけのもの」という考えを持っていました。しかし実際は、社会で活躍する上で役立つ考え方に触れられる考え方なのだと理解しました。
私が受講したオンラインの環境では、対面でのコミュニケーションと比べると交流が難しい面も否定できません。しかしその一方で、地元以外の学生と繋がれることは大きなメリットです。多様な考え方を知りたい人々にとっても、このプログラムは非常に適していると感じました。ただ漠然と大学生活を過ごすよりも、学生のうちからアントレプレナーシップの考え方に触れる機会を持つことが重要だと、現在の私なら自信を持って伝えられると思います。
羽賀
全国プログラムは、何かにチャレンジするきっかけや、ニーズに向き合う思考を身に付ける機会にも繋がります。これは非常に価値ある経験だと感じています。私自身、教育実習の経験から地域の中で小中高生を対象にした地域チャレンジプログラムを運営している中で感じたのは、多くの生徒・児童が起業を「特別なこと」と捉えているということ。
起業は選択肢の一つに過ぎず、それに至る過程での「挑戦」はどのような状況でも役立つということは、若い世代の方々に伝えたいですね。挑戦すること自体は何も「特別」なことではありません。自分らしい未来を創造するための一歩として、全国プログラムに触れてみて欲しいです。
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