日本版EntreComp v1を活用したプログラム創出WS

1.概要

2025年9月15日(月)、大阪府にある関西大学 梅田キャンパスで日本版EntreComp v1を活用したプログラム創出WSが開催されました。当日は大学教職員の方々から民間の見学者まで、全国各地から約40人もの方々にご参加いただき、関西大学教育推進部 教授​ 山田剛史先生による進行の基、生成AIツールを用いたカスタムAIのプロトタイプを活用したアントレプレナーシップ授業プログラム開発ワークや、関西大学を始めとした他大学でのケーススタディを実施しました。

2. イベント実施概要

【受講生へのメッセージ】
文部科学省・学術政策局 産業連携・地域振興課
室長補佐 大榊直樹様

大榊様から、本WSに参加する皆様へメッセージが送られました。「全学的にアントレプレナーシップ教育を実施する大学が増えてきている中、今後は質を高めていくことも非常に大切になってくる。本WSが、アントレプレナーシップ教育の量・質の双方を高めていけるよう活発にご意見を交わし合う時間になったら嬉しい」と、想いを語っていただきました。

文部科学省・学術政策局 産業連携・地域振興課 室長補佐 大榊直樹様

(1)プログラムの概要説明

WSの冒頭で、山田先生から今回のWSを実施した背景や日本版EntreCompv1の内容についてご説明いただきました。

WSを実施した背景
WSを実施した背景

FDプログラムでは「教員個人のプログラム思考力」を強化できますが、今後アントレプレナーシップ教育をより浸透させていくために、1人でも多くの学生へアントレプレナーシップ教育を受けることができる「環境」を作ることが重要だと考えています。そのためには、教員個人の取組みにとどまらず、大学組織の中にアントレプレナーシップ教育を位置づけていく必要があります。しかし、組織の中でアントレプレナーシップ教育の展開を図るには様々なハードルがあります。そこで、どのようにそのハードルをどう超えていくか・どのように学内で同じ仲間を作っていくか・どのように組織を巻き込んでいくことができるか等を、皆様とお話しすることができたら嬉しいと考えています。また、この機会を通して皆様自身も今後に向けた繋がりを築いていただけたら幸いです。
まずアントレプレナーシップ教育は、ビジネス教育や起業家向け研修とは異なり、ビジネス起業の方法を伝えること=アントレプレナーシップ教育ではありません。起業家精神ではなく起業家性(性質・技能)を育むため、文部科学省が2022年より推進する「全国アントレプレナーシップ醸成促進事業」の中で、長年アントレプレナーシップ教育に関わってきた教員複数名が議論を行い、日本版のEntreCompの作成を進めて参りました。EUが2016年に定めた「EntreComp」(Entrepreneurial Competence)から『アイデアと機会』『資源』『行動』という3つのコンピテンシーエリアの内、特に重要だと考えるコア・コンピテンシーを1つずつ取り上げたうえで、そのコア・コンピテンシーを細分化して、3個の『コア・コンピテンシー』と10個の『コア・スキル』に整理した日本版EntreComp v1を作成し、2025年3月に公表しました。

日本版EntreComp v1について

アントレ教育ガイド(アントレコンプ) – 全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム
※この日本版 EntreComp v1、ならびにそれに付随するガイドは、今後数年以内に刷新をする前提で作られています。

コア・コンピテンシーとコア・スキル

(2)プログラム開発WS

ソニーマーケティング株式会社 MESH事業室 室長

一般社団法人Arc&Beyond 業務執行理事/Co-Founder 萩原丈博様



本ワークは、AIを活用して「日本版Entre Comp v1」を用いたカリキュラムやプログラム設計のプロセス、ポイントを学ぶことを目的として実施しました。実際に教職員の皆様が設計したアントレプレナーシップ教育プログラムを、プロトタイプのAIツールに読み込ませ、サポート案やフィードバック案を取得しました。出力された内容やAIツールの活用方法についてディスカッションを行いました。

実際のワークの様子
実際のワークの様子

【参加者の声】
実際にAIツールを使用した皆様からは、「自身の頭の中を整理・言語化できる」「自分が普段作るシラバスとは全く異なる内容を出してもらえるため、凝り固まった内容にならない」「日本版EntreComp v1にあるコア・スキルの中で、自信が理解しきれていなかった項目も補ってくれる」といった感想と共に、「入力フォーマットがもう少し簡潔だと良いかもしれない」「自身のシラバスをそのままAIツールに入れることができると良いかもしれない」という改善案も頂きました。
このようなご意見や改善案を基に、AIを活用して日本版EntreComp v1を用いたカリキュラムやプログラム設計のプロセス・ポイントを学び、​自身・自校の教育活動に取り入れられるアイデアを得ることができれば、より充実したプログラム設計・学内展開が期待されます。
※本レポート末尾に実際のワークシートやAIツールを参考として掲載しております。ご興味がございましたらぜひご覧ください。

(3)ケーススタディ~アントレプレナーシップ教育の組織への展開/定着について~

愛媛大学 阿部先生・和歌山大学 和田先生・関西大学 百目木様の3名より、自大学におけるアントレプレナーシップ教育の実施事例をご共有頂き、その内容を基にケーススタディを実施しました。このケーススタディは、アントレ教育を自大学で展開する上での課題解決方法や​組織的な障壁を乗り越えるためのヒントを得ることを目的としています。

愛媛大学・阿部先生
愛媛大学・阿部先生
和歌山大学・和田先生
和歌山大学・和田先生
関西大学・百目木様
関西大学・百目木様
グループでの検討内容の発表のご様子
グループでの検討内容の発表のご様子
山田先生による愛媛大学ケーススタディの総括
山田先生による愛媛大学ケーススタディの総括

各大学の実施例に対するディスカッションでは、「教員に能力差があり、アントレプレナーシップ教育を実施する際に特定の教員への依存度が高くなってしまう課題がある。また、教員側の教え方・学生の特性の違いがある中で、どのように質の担保をしていくことができるのか」「日本版EntreComp v1という言葉ではなく、大学の組織戦略とリンクさせ、大学名を使ったコンピテンシーに改めて展開すると、学内に浸透しやすいのではないか」「地方と都市でアントレプレナーシップ教育における重点・方向性が異なるのではないか」「アントレプレナーシップ教育の中核となる先生だけでなく、それをサポートする周りの体制を整えていくことも重要だと感じた」「教員だけでなく職員も一同となって展開できると良い」「学生の分かりやすい言葉でアントレプレナーシップ教育のスキルを示す必要があるのではないか」等、多数の意見を交わし合う時間となりました。

(4)全体討議・ラップアップ

山田先生より、全体を通したメッセージが送られました。「大学のアントレプレナーシップ教育は、点(個人の一取組)を線・面にしていくことが非常に難しいと思います。しかし、アントレプレナーシップ教育を大学の性質と結びつけ、教職共同で進めていくことが大きな一歩に繋がると考えています。一緒に考えていくことができる仲間を少しずつ増やしながら、学生の目線を大切にして考えていくことが出来ると非常に良いのではないでしょうか」と、今後に繋がるお言葉を頂きました。

(5)関西大学事業推進局局長 服部様閉会挨拶

​関西大学事業推進局 局長 服部様よりメッセージを頂きました。まだアントレプレナーシップ教育が確立しきっていない中で、教職員の皆様が熱意をもって試行錯誤してくださっていることが非常に嬉しいとお声をいただきました。

関西大学事業推進局 局長 服部様

(6)懇親会

WS終了後、参加者たちによる懇親会が開かれました。全国からお集まり頂き、貴重な出会いも沢山ありました。会話が尽きないこの交流は、今後のアントレプレナーシップ教育醸成に向けたエネルギーの相乗・新たな可能性の拡大に繋がっていくでしょう。

懇親会の様子

3.参加者の声(事後アンケートより抜粋)

終了後に参加者の皆様に御回答いただいた事後アンケート調査では、本プログラム創出ワークショップの満足度(5段階評価)は「4.64」(N=25)と非常に高い満足度を得ることができました!参加者からは、「他大学の事例を知れた」「AIツールの活用方法」「狭義と広義のアントレプレナーシップの違い」「教員同士のネットワーク拡充」等についてポジティブなコメントもいただけたことから、参加者の方も非常に収穫の多かったワークショップであると認識し、講師・事務局共々嬉しい限りでございました。

プログラム創出ワークショップを通した評価
参加者が選ぶ本ワークショップで最も良かったプログラムについてのコメント

*ご参考* 「(2)プログラム開発WS」で使用したワークシートとAIツール

※AIツールはプロトタイプです。ツールが出力した内容を保証するものではございません。あくまで、ご自身の研究やプログラム設計の参考として、ご活用ください。

※営利目的の利用はお控えください。

「Googleスプレッドシート版ワークシート」に記載の「プログラム開発ワークシート」の項目を埋め、PDFに変換した上で「アントレ教育プログラム開発サポートツール(プロトタイプ版)」にアップロードします。

プログラム開発ワークシート
プログラム開発ワークシート
AIツール画面(ChatGPT無料版・回数等制限あり)
AIツール画面(ChatGPT無料版・回数等制限あり)

②プログラム構成の参考例が出力されます。出力されたプログラムに対して、ルーブリックの作成や、伸ばしたいコアスキルに適した改善計画など、出力内容は要望に合わせて会話形式でブラッシュアップできます(無料版では会話に回数制限があります)。

※ ワークシートを使わずに、対話式でプログラムの設計を行うこともできます。

アウトプットイメージ 和歌山大学 和田先生の記載例より

アウトプットイメージ
アウトプットイメージ

下記URLよりご体験いただけますので皆様是非ご活用下さい。
「Googleスプレッドシート版ワークシート」
「アントレ教育プログラム開発サポートツール(プロトタイプ版)」

上記プログラム開発サポートツールの他に、ご自身で既に作成されたアントレ教育のプログラムやカリキュラムに対してフィードバックを行うAIツールもございます。既存のシラバス等をPDFで読み込ませ、フィードバックを依頼するとコメントが返ってきます。こちらもご活用下さい。
「アントレ教育プログラムフィードバックツール(プロトタイプ版)」

【※ご利用アンケートのお願い】
これらのツールはプロトタイプであり、現場の職員の皆様方からの改善・使用感などのお声を元に精緻化していきたいと思います。御利用された方々につきましては、ぜひ下記Formsよりアンケートの御回答をお願いいたします。(所要時間:5,6分程度)
日本版EntreComp v1を活用したプログラム創出WS AIフィードバックツールアンケート – フォーム​に記入する