大砂 百恵 記事
私のアントレプレナーシップ インタビュー
#4
スタートアップに挑戦する
大砂 百恵
Momoe Osuna
e-Combu 代表

生き方は自由でいい。
昆布に懸けた20歳の挑戦

北海道の帯広市から南に約80km、海沿いにある人口6000人の広尾町に、昆布を使った環境型ビジネスに挑む二十歳の大学生がいます。小樽商科大学に通う大砂百恵さんは、アントレ教育のプログラムを受けるなかで、昆布ビジネスを行う『e-Combu』を自ら立ち上げました。事業を成功に導くため日々奮闘する大砂さんに、事業への思い、そして自分を変えてくれたアントレ教育について話を聞きました。

昆布入り飼料で牛のメタンガスを減らす

e-Combuでは、昆布を使った牛の飼料を製造・販売する事業に取り組んでいます。私たちが使うのは、自然に浜に打ち寄せられてくる昆布です。昆布漁には「拾い昆布漁」と呼ばれる方法があります。ただし、この方法で収穫されるのは漂着した昆布の約2割程度であり、残りの8割は未活用のまま。この“もったいない”昆布を有効活用したいと考えています。

e-Combuの飼料の特長は、牛のゲップ問題の解決に寄与する点にあります。牛のゲップにはメタンガスが含まれているのですが、メタンガスは二酸化炭素の約25倍もの温室効果があるため、地球温暖化の原因の一つとされています。牛は1頭当たり1日に500リットル以上のゲップを放出しており、国内のメタン排出量の約4分の1を占めています。こうした社会課題を解決するために、e-Combuはメタンガスの排出を減少させる飼料の開発に取り組んでいます。また、カーボンクレジットを活用した、温室効果ガスの削減量を企業に購入してもらい、そこで得た収益を酪農家に還元するビジネスモデルも考えています。現在のメンバーは、私と副代表の錦古里、帯広畜産大学の宮下和夫先生の3人です。宮下先生は北海道大学で25年以上海藻の研究をされてきた昆布の専門家で、とても頼りになる存在です。

副代表の錦古里さん(左)
副代表の錦古里さん(左)

事業としてのフェーズは研究・開発の段階ですが、北海道にとって、広尾町にとって非常に良いという声をいただく機会が増えており、地域に受け入れられてきていると感じます。自分が実現したい世界や思い描いている未来が、周りの人々から共感を得る瞬間は非常にうれしく、この事業を絶対にやり遂げたいという気持ちが一層強くなっています。

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社会貢献に目覚めた留学先での体験

社会課題解決への意識が高まったのは、高校時代に留学先で体験したある出来事がきっかけです。もともと単純に海外に行ってみたいという気持ちと、宇宙に興味があってスペースシャトルを見に行きたいという思いから、高校1年の夏休みに文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」という制度を利用して3週間ほどアメリカに短期留学したのですが、念願のスペースシャトルを見学しに行った帰り道で、生まれて初めて見たホームレスの方から「数ドルでいいから欲しい」と物乞いをされました。「16歳の女の子に対して物乞いをする世界」を目の当たりにし、そして何よりそれが「スペースシャトルという最先端の世界」と隣り合わせになっている現実に、衝撃を受けたことを覚えています。これをきっかけに、「困っている人々に手を差し伸べたい」、「自分にもできることがあるはずだ」と感じ、それまで宇宙に向かっていた興味が、地球全体をより良くする方にも向くようになりました。

アントレ教育を受けた理由は、第一志望の大学に進学できなかったことで、「自分を変えたい」、「自分でキャリアを切り拓かなければ」と思うようになったからです。私が参加したプログラムは半年間にわたり、自身が解決したい社会課題を見つけ、メンターにサポートいただきながらそれをビジネス化するという内容でした。先に述べた留学経験から、アメリカと日本を対比するなかで、日本が物と情報であふれていることに気づき、無駄を減らしたいとの思いが芽生えました。

周囲にある“もったいない”ものを利用してビジネスにできないものか。最初はコーヒーかすに着目したのですが、自分のやりたいこととは何かが違う……。試行錯誤の日々のなかで、あるとき電車に乗ってなんとなく海を眺めていたところ、曾祖父が昆布漁師をしていたことを思い出しました。「そうだ! 浜に打ち上げられたまま収穫されない“もったいない”昆布があるじゃないか」とひらめいたんです。未活用の昆布の有効な利用方法はないかと調べていくと、『鎌倉海藻ポーク』という鎌倉で採れた海藻の飼料で育てたブランド豚の存在に出会います。これなら昆布を活用できる。e-Combuの歯車が回り始めた瞬間でした。

守から攻へ。マインドを変えたメンターの助言

アントレ教育では、思考のステップやどうすればマインドを変えられるかなど、事業を前進させるために必要なことを、メンターとの対話を通じて学びました。私は、正しいことを追求し過ぎて、自分の事業は必ず成功するべきだというプレッシャーを感じてしまう傾向があるようで、守りに入ってしまい挑戦できないことがありました。しかし、メンターの「人生暴れろ、今はもっと暴れたほうがいい」という助言のおかげで目が覚め、「一度失敗しても命まで取られるわけではない」というマインドになれたのは、大きな成長でした。

また、高校までは部活動に没頭していたので、勝ち負けに焦点を当て、それによってモチベーションを維持していました。でも、そのやり方だと「今日これをするかどうか、この人とアポイントを取るかどうか」といった選択を迫られる状況では足が動きません。人生は常に「やるか、やらないか」の二択です。他人に左右されるのではなく、自分自身との競争、自分に勝つかどうかを基準にしてモチベーションを維持できるようになることが、非常に重要だと気付くことができました。

大砂 百恵 インタビュー

多様な生き方をする大人たちとの出会い

自分の価値観の大部分を作ってくれたと感じています。今までは、「未熟な自分が挑戦していいのか」、「この領域で登り詰めてから次のステップに進んだほうがいいのではないか」と考えて挑戦することが怖かったときもあったのですが、実際にビジネスの世界で活躍されている方々に会うと、彼らも「片足でグラグラしながら進んでいるんだ」という言い方をされていて、必ずしも足元を固めてから前に進んでいるのではないんだということが分かったんです。自分が興味を持った領域にどんどん挑戦していき、それを繰り返していけばいいと思えるようになったのは、自分のなかでは大きな変化です。

そして何よりも、学校や部活など小さなコミュニティだけではなかなか出会えない人たちの生き生きとした姿に触れ、これほどまでに多様な生き方が存在することを知れたのが、一番大きな収穫でした。それまでは、良い大学に進学し、良い企業でキャリアを積むといった安定したルートしか知らなかったのですが、アントレ教育を通じて、名刺が3種類ある人、全国を飛び回る人、二拠点生活をする人など、ダイナミックな生き方や仕事のスタイルに触れることができた。すべてが新鮮で、みんな人生すごく楽しそうで、「人生は一通りではないんだ」、「こんな生き方あるんだ」と衝撃を受けました。これからアントレ教育を受けようか迷っている方がいたら、自分の視野を広げるためにも思い切って飛び込んでみてください。きっと、良い出会いがあるはずです。

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